こんにちは。元カメラ販売員のふわくです。
フルサイズセンサーを搭載したミラーレス一眼が最も盛り上がっているように見える現在のカメラ市場ですが、そんな中、比較的小型なマイクロフォーサーズセンサーを搭載したカメラも淘汰(とうた)されることなく、未だ根強い人気を誇っています。
それはなぜでしょうか。
今回はその秘密に迫ってみたいと思います。
【メリット1】軽量化、小型化しやすいので持ち運びがラク
センサーサイズが小さいことで、軽量小型化を実現できます。これは大変大きなメリットです。
たしかに、最近はフルサイズミラーレス一眼にも軽量コンパクトな製品も出てきました。
しかし、Sony α7Cしかり、SIGMA fpしかり、グリップ部分がフラットで持ちにくかったり、ダイヤルやボタンが少なかったりと、少々使いづらさがあったりします。
その点、マイクロフォーサーズセンサーのミラーレスは、そのセンサーサイズゆえ、物理的に余裕のある設計が可能となるため、必要な機能をふんだんに盛り込みながらも、小型軽量化も同時に実現できるというメリットがあります。
小型軽量化できるのはカメラ本体だけじゃない!
カメラ本体がいくら小さくなっても、レンズが大きくて重かったらあまり意味ないですよね。バランスも悪いですし。
小さなセンサーサイズにあわせて、無駄のない大きさでレンズを設計できるというのも、マイクロフォーサーズの大きなメリットです。いや、むしろこっちがメインかも知れません。
先日まで私が使っていたこれ↓とちょっと比較してみましょう。
いわゆる大三元レンズの最も広角側のレンズですが、重量は970グラムあります。
それに対し、マイクロフォーサーズ対応のオリンパスの超広角大三元レンズのこちらは・・・
わずか534グラムとなっています。
ほぼ半分。圧倒的な差です。
ということで、ニコンZマウント用の大三元超広角レンズのこちらは・・・650グラムです。
そうです。このレンズはフルサイズ用の14mm始まりの超広角レンズとしては世界最軽量(2020年9月時点)をうたっているレンズで、めちゃくっちゃ軽い。
ただ、それでもやっぱりマイクロフォーサーズ用レンズには敵わないわけです。
また、今後後継のII型なんかが出たらもっと軽量化されている可能性も十分あり得ます。
とまぁ、これはほんの一例ですが、ズームレンズだけでなく、F1.4クラスの大口径単焦点レンズなどでも驚くほど軽いレンズが多いです。
カメラとレンズが小さくて軽いということは、気軽に持ち歩けるので、機動力に直結します。
重いし、カメラ持っていくのやめとこうかな、ということが圧倒的に少ないのがマイクロフォーサーズシステムの大きな魅力の一つなんですよね。
それに、軽すぎちゃって困っちゃう・・・ってほどには軽くないから安心してねw
【メリット2】ほどよい被写界深度という名の最強の武器
センサーサイズが小さいとそれだけボケにくくなります。
その理由やフルサイズ、マイクロフォーサーズのボケ方の違いについて、以下の記事で解説していますので、詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
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レンズの設定で被写界深度を深くしたい(ボケ量を小さくしたい)ときって、絞りますよね。
でも、絞るとセンサーに入る光量が減るので、シャッター速度を遅くするか、ISO感度を上げる必要があります。
それによって、ブレやすくなったり、画質が低下(ノイズが乗りやすくなる)するという問題があります。
ところが、もともと被写界深度の高いマイクロフォーサーズ用レンズなら、絞る前にすでに被写界深度が深いので、有利な条件で撮影できるわけです。
上の写真ですが、オリンパスのミラーレスと、25mm(35mm換算で50mm相当)のレンズで撮影したものです。
薄暗くなりつつある夕方に、シャッター速度1/125を確保しつつ、ISO200という低感度を維持できたのは、絞らずに(開放F1.4を使用)撮影したからに他なりません。
2台の人力車になるべくピントを合わせるようにして撮影したのですが、同じ絵をフルサイズ+24mm/1.4の組み合わせで実現しようと思うと、絞らざるを得ません。
その上で、同じシャッター速度で撮るとなると、ISO感度を上げなければなりません。
「だったら、そもそも、トータルで軽量小型なマイクロフォーサーズシステムで十分じゃね?」
どうでしょ?
プロの動画撮影の現場でも重宝されるマイクロフォーサーズ
また、動画撮影においても、作品撮りやプロの現場では、MF(マニュアルフォーカス)が使用されますが、
被写界深度が浅すぎるとピント合わせが大変で、特に動く物が被写体だとかなりの難易度になります。
こういうときもマイクロフォーサーズの「浅すぎない被写界深度」がめちゃ有利なんです。
ちなみに、プロのビデオグラファーに愛用者が多いBlackmagic Designのシネマカメラ「BMPCC4K」もマイクロフォーサーズだったりします。
そうはいっても、結構ボカすことだってできる
APS-Cやフルサイズと比較すれば、被写界深度が深い(ボケにくい)ですが、当然、コンデジやスマホとは比較にならないくらいボケやすいです。
それもそのはず、それらのセンサーと比較すると、マイクロフォーサーズレンズはかなりの大型。
ちなみに、ハンディーカムを始めとする一般的なビデオカメラは、総じてセンサーサイズが小さく、高価なモデル(20万円クラス)ですら、ようやっと、1インチセンサーという感じです。
1インチを超えるマイクロフォーサーズがいかにすごいかがわかると思います。
ちなみに、↓は、さっきのサンプル写真を撮ったときと同じレンズ(25mm/1.4)で撮影した写真です。結構しっかりボケてますよね。この写真がいいかどうかは別にして^^;
また、ポートレートレンズのM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8なんかは、実売2万円台のレンズですが、さすがは単焦点。しっかりボケます。
画像引用元:オリンパスイメージング
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そして、ボケといえば、超望遠。LUMIX G VARIO 100-300mm / F4.0-5.6 II / POWER O.I.S.なら、ズームレンズでも当然ボケまくりです。
画像引用元:Panasonic
手軽・手頃なのに、しっかりしたボケ味も楽しめるし、ボケのない絵を作るのも得意という、バランスの良さこそがマイクロフォーサーズの強みでしょう。
一方、フルサイズでボカしすぎて、何を撮りたいのかよくわからない写真を量産している人もいます。
【メリット3】本体もレンズも比較的手頃に買える
本体価格については、フラグシップ機(最上位機)でも、フルサイズセンサーのミラーレス一眼のミドルクラスと同程度の価格となります。
また、レンズも比較的お手頃です。
結構高いレンズもありますが、それでも同等のフルサイズ用レンズなどと比較するとやっぱり安いです。
浮いたお金で別のレンズやアクセサリーを買っちゃってくださいw
その他のメリット
マイクロフォーサーズ独自のメリットというよりは、各メーカーの製品の良さ、についても触れておきたいと思います。
マイクロフォーサーズ自体が好きという人よりも、「オリンパスが好き」とか「パナのこの機種が好き」といった指名買いのパターンも多いからです。
美しいデザインと高機能を両立したオリンパス
実は、私がカメラを好きになったきっかけは、人生で初めて買ったオリンパスのデジカメでした。
その後、新しく買い替えたカメラは5台続けてオリンパス。そして初めて買ったミラーレス一眼もまたオリンパス。
理由はなんといっても、その写りの良さ。そして、デザインの良さ。
「カメラ女子」という言葉が生まれて久しいですが、オリンパスPENはその洗練された外観から、男性だけでなく女性ファンも多く取り込むことに多大な貢献をしたカメラでしょう。
オシャレなコンパクトミラーレス一眼 オリンパス PEN E-PL10 画像引用元:オリンパスイメージング
また、往年の一眼レフライクなデザインのOM-Dもまたカメラ好きの心をくすぐるデザインとなっています。
三角形のペンタ部が美しい オリンパス OM-D E-M5 Mark III 画像引用元:オリンパスイメージング
また、ミラーレス一眼にいち早くセンサーシフト式5軸手ブレ補正を搭載してきたオリンパス。
このOM-Dシリーズは全機種で5軸手ブレ補正(5.5段~7.5段)が搭載されており、写真はもちろん、動画でもかなりの威力を発揮します。
センサーが小さい分、手ブレ機構でセンサーシフトする(センサーを動かす)可動域に余裕があるということも高性能な手ブレ補正を可能にしている理由の一つです。
ちなみに私が現在使用しているSONYのミラーレス一眼は、5.0段分の5軸手ブレ補正を搭載していますが、オリンパスの5.5段とは比較にならないくらいブレます。。
言わずと知れた、YouTuber御用達のパナのGHシリーズ
PanasonicのGH3(DMC-GH3)というカメラが動画性能にかなり偏ったカメラで、そのレベルの高さから、カメラ系ユーチューバーの間で瞬く間に広がりました。
後継機種のGH4(DMC-GH4)が出る頃には、カメラに全く詳しくないユーチューバーにまで飛び火し、さらなる広がりを見せたということは、このブログをご覧になっている人ならご存知かも知れません。パナチューバーという言葉が市民権を得た(?)のもこの頃です。
現行はGH5ですが、まもなくその後継GH5 markIIが発売される決定しており、早くもGH6の登場も噂されています。
まだまだGHシリーズの勢いは留まるところを知りません。
マイクロフォーサーズのデメリットは?
さて、ここまではポジティブな面だけにフォーカスを当ててきましたが、ネガティブな面についても触れておきましょう。
フルサイズと同じボケ量を得るには、画角を犠牲にする必要がある
APS-Cやフルサイズと比べると、被写界深度が深い(ボケにくい)というのは、マイクロフォーサーズのメリットでもあるんですが、ボカしたい場合はボケにくい、というのは、結果、デメリットとも言えるでしょう。
しっかりとボカしたいときは、明るいレンズを選ぶのと同時に、焦点距離が長いものを選ぶというのも条件の一つになります。
しかし、マイクロフォーサーズは、実際の焦点距離よりも画角が狭く写るため、ちょっと注意が必要です。
たとえば、フルサイズで焦点距離50mmのレンズで撮ると下のように写りますが・・・
マイクロフォーサーズで焦点距離50mmのレンズで(同じ立ち位置から)撮ると、下のように写ります。
背景のボケ方は一緒ですが、大きく、狭く写ります。
実際の焦点距離が同じレンズ(今回は50mm)を使えば、マイクロフォーサーズでも同レベルのボケ量を得ることもできますが、その代わりに、画角は狭く(100mm相当の狭さに)なってしまいます。
詳しくは、下の記事をご覧ください。
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しかし、もう少し焦点距離の短いレンズを選べば、画角の狭さは解消されますので、別にフルサイズと同レベルのボケ味を求める必要がなければ、特に問題にはならないでしょう。
高感度(低照度)ノイズが出やすい
フルサイズやAPS-Cと比較すると、そのセンサーサイズゆえに、得られる光量は減るため、どうしても高感度ノイズは出やすくなります。
しかし、年々センサーそのものの性能や内蔵ソフトウェアの性能が上がってきていて、ひと昔前とは比べ物にならないくらい改善していますので、古いマイクロフォーサーズ機しか使ったことがない人が、最近のやつを使うと驚くかも知れません。
まとめ
フルサイズやAPS-Cに比べると小さなセンサーとなる、マイクロフォーサーズ。
センサーサイズが小さいことによるメリットは多岐に渡ります。
- カメラ本体だけじゃなくて、レンズも軽量小型化できるので、機動力がずば抜けている。
- 小さいボディながら、ボタンやダイヤルを多く配置して使いやすくできる。
- 被写界深度が元々深い(ボケが浅い)ので、必要以上に絞らなくてよい(ISO感度やシャッター速度の制限を受けにくい)
- システム全体の価格を比較的安価に抑えることができる。
- センサーサイズに対して、ボディ内の空間にゆとりがあるので、強力な手ブレ補正システムを構築しやすい。
- オリンパスやパナソニックの素敵なカメラを選べる♪
また、PanasonicのGHシリーズや、Blackmagic DesignのBMPCC4Kを始めとする、動画撮影に定評のあるカメラもまた、マイクロフォーサーズを採用しているというのも特筆すべき点ですね。やはり取り回しの良さ、動画撮影に最適な被写界深度という点も大きく関係しているものと思われます。
マイクロフォーサーズにも弱点はありますが、そこもよく理解した上でお使いいただければ、必ず満足のカメラライフを送ることができると思います。
ということで、今回の記事では、マイクロフォーサーズについて語ってみましたが、最後に一言・・・
センサーが小さいカメラこそ正義、いやいや、大きいカメラが偉いでしょ、といったような議論はいつの時代もありますが、これは全くナンセンス。
自分の好きな(用途にあった)ものを選べばよいのですから。好きなカメラを楽しみましょうよ♪
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